SNSで大学受験の話を見ていると、
「偏差値60くらいの高校ならMARCHは普通」
「進学校ならMARCHが最低ライン」
そんな言葉を見かけることがあります。
でも、地方で高校受験・大学受験を見てきた親としては、これにはずっと違和感がありました。
いや、MARCHって普通に難しくない?
そこで、栃木・群馬・茨城にある偏差値60前後の公立進学校について、実際の大学合格実績を調べてみました。
先に結論を書くと、
MARCHは十分に狙える。
でも「その高校に入れば普通に受かる」と言えるほど近くはない。
実際の数字を見ると、このくらいの距離感が一番しっくりきます。
※この記事でいうMARCHは、明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学です。高校偏差値は媒体によって異なるため、おおよその目安として扱っています。
偏差値60前後の公立高校4校を比べてみた
今回は北関東から、学力帯が比較的近い4校を取り上げました。数字は主に2025年入試の公表資料をもとに、できる限り現役生の数字にそろえています。
| 高校 | 偏差値目安 | 卒業生規模 | MARCH・現役 | 国公立・現役 |
|---|---|---|---|---|
| 鹿沼高校(栃木) | 約60 | 約240人 | 26件 | 94件 |
| 高崎北高校(群馬) | 約59 | 235人 | 20件 | 92件 |
| 水戸桜ノ牧高校(茨城) | 約61 | 約320人 | 16件 | 108件 |
| 牛久栄進高校(茨城) | 約63 | 約320~360人 | 92件 | 91件 |
※「件」は学校が公表する合格件数です。現役・既卒の区分や集計方法は学校によって異なります。高崎北高校は学校公式資料で年度別の表記があるため、掲載資料の更新時点にも注意してください。
鹿沼高校では、青山学院5・中央6・法政5・明治9・立教1で、MARCHは現役26件。水戸桜ノ牧高校では現役16件、牛久栄進高校では現役92件でした。
ここでまず目につくのが、同じ「偏差値60前後の公立進学校」でも、MARCHの数字がかなり違うことです。
鹿沼・高崎北・水戸桜ノ牧は16~26件。一方、牛久栄進は92件とかなり多い。
つまり、「偏差値60の高校=MARCH○%」のように単純には考えられないということです。
学校の学力層だけでなく、国公立志向か私大志向か、どの地域の大学を受験する生徒が多いか、私大を何校受験するかによって、合格実績は大きく変わります。
「MARCH26件」=26人が受かった、ではない
ここは高校の大学合格実績を見るときに、かなり重要です。
学校が公表している「大学合格者数」は、多くの場合延べ合格数です。
たとえば、ある1人の生徒が明治大学・中央大学・法政大学の3校に合格したら、合格実績には3件として載ります。
さらに、同じ大学の複数学部に合格した場合も、集計方法によっては複数件になることがあります。
だから、
卒業生240人でMARCH26件
→ 約11%の生徒がMARCHに合格した
とは言えません。実際にMARCHに合格した人数は、延べ合格数より少ない可能性があります。
逆にいうと、「偏差値60くらいの高校ならクラスに何人も当たり前にMARCHへ行く」と考えるのも少し違います。
それでもMARCHは「十分狙える大学」ではある
一方で、「じゃあ偏差値60の高校からMARCHは無理なの?」というと、それも違います。
今回調べた学校からも、毎年MARCH合格者が出ています。
重要なのは、「高校に入れる学力」と「その高校からMARCHに合格できる学力」は同じではないということです。
偏差値60前後の高校に合格すれば、その時点では同じくらいの学力だった生徒たちが集まります。でも高校3年間で、上位を維持する生徒、真ん中あたりに落ち着く生徒、勉強しなくなって下位になる生徒に分かれていきます。
大学受験で効いてくるのは、「偏差値60の高校に通っている」という肩書きより、その中でどの位置にいるかです。
「高校偏差値60」と「大学偏差値60」は同じではない
ここも親世代が混同しやすいところです。
高校受験の偏差値60と、大学受験の偏差値60を、「どちらも偏差値60だから同じくらい」とは考えられません。
高校受験では中学生のかなり広い層が母集団になります。一方、大学受験、特にMARCHクラスの模試や一般選抜では、そもそも大学進学を考えている層が中心です。比較している集団そのものが違うわけです。
だから、
「偏差値60の高校に入った」
↓
「偏差値60の大学も同じくらいの難易度」
とはなりません。高校受験では十分な進学校に入ったつもりでも、大学受験になるとMARCHが急に遠く感じる。これは珍しいことではありません。
地方の進学校は「MARCHだけ」を目指しているわけではない
もう一つ、北関東の数字を見ると面白いことがあります。
鹿沼高校はMARCH26件に対して国公立94件。高崎北高校もMARCH20件に対して国公立約90件。水戸桜ノ牧高校もMARCH16件に対して国公立108件です。
MARCHより、国公立大学の合格数のほうがずっと多い学校があります。
これは「MARCHに受からない」という話だけではありません。地方では、地元や近県の国公立大学を第一志望にする、自宅から通える大学を選ぶ、私大の学費+一人暮らしを避ける、国公立を受けつつ私大を併願する、といった進路選択が多くなります。
だから高校の進学力を見るとき、MARCHの数だけを見て学校を評価するのは危険です。国公立、日東駒専、地元私大、推薦なども含めて、学校全体の進路を見る必要があります。
栃木県内については、石橋・鹿沼・宇都宮北・真岡・宇都宮中央の5校を別の記事で詳しく比較しています。
牛久栄進はなぜMARCHが多い?
4校を比べると、牛久栄進高校のMARCH現役92件はかなり目立ちます。
2025年は現役だけで、明治21・青山学院11・立教21・中央11・法政28の計92件。国公立も現役91件です。
一つ考えられるのが立地と進路選択の違いです。
牛久栄進がある茨城県南部は、北関東の中では東京圏との距離が比較的近い地域です。そのため東京都内の私立大学を受験対象にしやすいことは、MARCHを含む私大の受験件数に影響している可能性があります。
ただし、「立地だけが原因」とは言えません。学校の学力層、受験指導、生徒の志望、私大の併願数など複数の要因があるので、合格件数だけで学校同士の優劣を決めないことが大切です。
わが家の大学受験でも「高校に入ってから」が大きかった
わが家でも、今回取り上げた学校と近い学力帯の高校から大学受験を経験しました。
そのとき強く感じたのが、高校受験でどこに入ったかだけでは、その3年後は全然分からないということでした。
入学時点では似たような学力だったはずなのに、高校3年間でかなり差がつきます。高校名だけを見れば「MARCHも狙える高校」であっても、本人が校内のどの位置にいるのかによって、現実的な志望校は変わります。
逆に、入学時点では特別目立たなくても、3年間しっかり積み上げれば国公立や難関私大が見えてくることもあります。
「○○高校に入れば安心」ではなく、高校に入ったあと、どの位置を目指すか。大学受験まで考えるなら、こちらのほうがずっと重要でした。
「MARCHくらい普通」は、どこの世界なら普通なのか
では、ネットでよく見る「MARCHくらい普通」という感覚はどこから来るのでしょうか。
都市部の上位進学校や中高一貫校など、周囲の多くが難関大学を目指す環境では、MARCHが併願校として大量に受験されるケースがあります。そういう環境の人から見ると、「MARCHは普通」という感覚になることはあるでしょう。
でも、それを全国の高校生にそのまま当てはめることはできません。
北関東の偏差値60前後の公立高校を実際に見ると、
MARCHは手が届かない大学ではない。
でも、入学しただけで自然に届く大学でもない。
この表現が一番近いと思います。
高校の大学合格実績で、保護者が確認したいこと
高校選びで大学合格実績を見るなら、私は次の5点を確認します。
- 合格者数は延べ合格数か、実人数か
- 現役と既卒が分けられているか
- 1年だけでなく過去3年程度の実績はどうか
- MARCHだけでなく国公立・日東駒専・推薦など全体を見る
- その大学に合格する生徒が、校内でどのあたりの位置なのか
特に最後は重要です。「この高校からMARCHに何人受かったか」だけでなく、“この高校に入ったあと、上位何割くらいを目指せばいいのか”まで分かると、高校選びの見え方はかなり変わります。
よくある質問
偏差値60の高校に入れば、MARCHに合格できますか?
合格者は毎年出ていますが、高校に入っただけで自動的に合格できるわけではありません。高校内での位置、学習量、志望学部、受験方式によって変わります。
合格実績の「26件」は、26人という意味ですか?
多くの場合は延べ合格数です。同じ生徒が複数大学・複数学部に合格した場合も含まれるため、26人が合格したとは限りません。
MARCHの合格数が少ない高校は、進学実績が弱いのでしょうか?
そうとは限りません。地方の公立進学校では国公立大学を第一志望にする生徒も多いため、MARCHだけでなく国公立・地元私大・推薦などを含む進路全体を見る必要があります。
まとめ|偏差値60の高校からMARCHは「普通」ではない。でも十分狙える
北関東の偏差値60前後の公立高校を調べてみると、MARCHには毎年しっかり合格者が出ています。
だから、「偏差値60の高校からMARCHなんて無理」ではありません。
一方で、「偏差値60の高校ならMARCHくらい普通」でもありません。
高校の偏差値だけでなく、入学後の校内順位、本人の学習量、志望校の選び方、学校の進路傾向によって大きく変わります。
高校受験の段階では、つい「どの高校に受かるか」に目が向きます。でも大学受験まで考えるなら、どこに入るかと同じくらい、入ったあとにどう過ごすか。こちらも考えておきたいところです。
栃木県内の高校については、実際の大学合格実績を学校別に詳しく比較しています。また、偏差値60前後の高校で校内下位になったところから国公立大学を目指した、わが家の実体験はこちらにまとめています。
出典・参考資料
各校が公開している2025年入試・進路実績をもとに整理しています。大学合格実績は学校ごとに集計方法が異なるため、厳密な学校ランキングを目的としたものではありません。
※高校偏差値は学校公式の数値ではなく、高校情報サイト等で示される目安です。媒体・年度によって差があります。また、大学合格実績は学校ごとに集計方法が異なるため、数字は学校選びの参考としてご覧ください。