子どもが勉強していないと、「うちの子だけなのかな」「もっとやらせた方がいいのかな」と不安になる。
でも、家庭で見えている子どもの姿と、全国のデータは少し違う角度から現実を見せてくれる。
今回は、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所による「子どもの生活と学びに関する親子調査2025」をもとに、子どもの学びがこの10年でどう変わったのかを考えてみたい。
なお、調査結果から因果関係を断定することはできない。数字を「だからスマホが悪い」「だから親の関わりが悪い」と単純化せず、家庭で考える材料として読んでいく。
学習時間は本当に減っている
学校がある日の1日あたりの総学習時間は、2015年から2025年にかけて次のように減少していた。
- 小4〜6生:83分 → 66分
- 中学生:107分 → 88分
- 高校生:119分 → 97分
特に減少が大きいのは、学校の宿題をする時間だ。小4〜6生では44分から30分、中学生では49分から36分、高校生では54分から37分になっている。
一方で、学習塾に費やす時間は大きく変わっていない。つまり、「塾に行く子が一斉に勉強しなくなった」というより、家庭での宿題や宿題以外の学習が少しずつ減った結果として、総時間が下がっているように見える。
「やる気がない」だけでは説明できない
小4〜6生に、学習について尋ねた結果も気になった。
- 「勉強しようという気持ちがわかない」:32.7% → 54.3%
- 「何のために勉強しているのかわからない」:20.9% → 40.2%
もちろん、これだけで「子どもが怠けるようになった」とは言えない。
ただ、「勉強しなさい」と言われても、目的も方法も見えない状態なら、机に向かうことが難しいのは自然なことだと思う。
小学生の家庭学習では、いきなり長時間を求めるより、まず「今日は何をできるようにするか」を一緒に言葉にする方が、学習への入口をつくりやすいのかもしれない。
勉強が好きな小学生も減っている
「勉強が好き」と答えた割合は、小4〜6生で2016年の68.5%から2025年には53.1%へ、中学生では46.1%から39.7%へ低下している。高校生はおおむね4割前後で横ばいだった。
この数字を見て、「勉強が好きではない子が増えた」と嘆くだけではもったいない。
好き嫌いは、得意不得意だけでなく、「何をすればいいかわかる」「少しできるようになった」「自分に合う方法が見つかった」という経験にも左右される。
勉強が好きに変わるのを待つより、短時間でも「できた」と感じられる課題をつくる方が現実的だろう。
スマホ140分、勉強97分という数字をどう読むか
高校生の携帯・スマートフォンの利用時間は、2015年の96分から2025年には140分になった。一方、総学習時間は119分から97分に減っている。
この数字だけを見て、「スマホのせいで勉強しなくなった」と結論づけることはできない。スマホで学習する場合もあるし、生活や学校の変化など、ほかの要因も考えられる。
ただ、1日の時間が有限であることは確かだ。禁止するか放置するかの二択ではなく、睡眠、食事、勉強、娯楽の順番を家庭で話し合う必要がある。
勉強場所は「自分の部屋」よりリビング
小4〜6生では、自分の部屋で勉強する割合が2016年の4割強から2025年には2割台へ減った。一方、リビングで勉強する割合は9割弱で、引き続き高い。
子どもがリビングで勉強していると、「集中できていないのでは」と心配になることもある。でも、家族の気配がある方が安心して取り組める子もいる。
学習環境は、立派な机や個室を用意することだけではない。始めやすく、困ったときに声をかけやすい場所をつくることも、家庭の支援になる。
大学進学を望む親と子どもの差
2025年、「大学以上」への進学を希望する保護者は、小4〜6生で71.2%、中学生で72.5%、高校生で75.5%だった。
一方、子ども本人は小4〜6生で55.0%、中学生で64.1%、高校生で75.1%。小学生のうちは親子の間に差があるが、高校生になるとほぼ一致する。
親が早い段階から進路を考えるのは自然なことだ。ただ、親の希望がそのまま子どもの目標になるとは限らない。
「大学に行くかどうか」を急いで決めるより、大学で何を学べるのか、どんな仕事や生活につながるのかを、子どもが自分の言葉で考えられる機会を増やしたい。
教育費の差は小学生から見えている
小4〜6生の月平均教育費は、2015年の14,849円から2025年には16,961円に増えている。
さらに2025年のSES別では、最上位層が24,904円、最下位層が9,669円だった。SESは世帯収入だけでなく、父母の学歴や父親の職業などからつくられた指標である。
この差を見て、「教育は結局お金」と決めつけるのも違うと思う。教育費が高い家庭の子どもが必ず伸びるわけではないし、費用をかけられない家庭にも工夫はある。
ただし、教材、習い事、塾、体験の選択肢に差が生まれやすい現実は、見ないふりをしない方がいい。個人の努力だけでなく、家庭環境の違いも含めて考える必要がある。
高校生の約6割が学習に生成AIを使う
学校外の学習で生成AIを使う割合は、小4〜6生11.3%、中学生32.7%、高校生57.7%だった。
もう「使わせるか、使わせないか」だけを議論する段階ではない。大切なのは、答えをそのまま出させるのか、わからない部分を説明してもらうのか、出力を自分で確かめるのかという使い方だ。
調査では、「生成AIが進化すれば勉強する必要はない」と考える子どもほど、学習意欲や学習時間が低い傾向も示されている。ただし、これは関連であって、生成AIが直接の原因だと証明したものではない。
データから見えるのは「怠け」ではなく、学び方の変化
今回の調査から、子どもたちの学習時間、勉強への気持ち、スマホの使い方、進路意識、教育環境が変化していることがわかる。
だからこそ、家庭でできることも「勉強しなさい」と言い続けることだけではない。
- 何をできるようになりたいのかを言葉にする
- その子に合う勉強方法を一緒に試す
- スマホや生成AIを禁止ではなく使い方の問題として話す
- 親の進学希望と子どもの希望を分けて考える
「うちの子は勉強しない」と悩んだとき、全国平均と比べて安心するだけでなく、その子がどこでつまずいているのかを見つける材料にしたい。
出典:東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査2025」
https://benesse.jp/berd/shotouchutou/research/detail_260331-1.html
参照資料:東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査2025」ダイジェストPDF
https://benesse.jp/berd/shotouchutou/research/pdf/oyako_tyosa_2025_0326.pdf