「公立高校の定員割れが進んでいる」「最近は私立を選ぶ子が増えた」。そんな話題を見かけて、ずっと気になっていました。
栃木県には宇都宮高校、宇都宮女子高校、石橋高校、真岡高校など、大学進学を目指す人におなじみの公立高校があります。それなのに、本当にみんな私立へ向かっているのでしょうか。
気になったので、栃木県総合教育センターが公開している2023年・2024年・2025年の「第1回進路希望調査」を並べてみました。すると、県全体の数字と、学校別の数字では、見え方がずいぶん違ったのです。
県全体では、確かに「県立希望が減り、私立希望が増えている」
まずは県全体の傾向から。各年10月1日時点の進路希望調査で、卒業予定者全体に占める希望割合を比べました。
県立全日制を希望する割合は72.8%から70.7%へ。一方、県内私立全日制・中等教育学校を希望する割合は10.9%から12.6%へ上がっています。
人数で見ると、県立全日制の希望者は12,546人→11,772人(774人減)、県内私立全日制等は1,880人→2,091人(211人増)。同じ期間の卒業予定者は17,243人→16,644人と599人減っています。
子どもの数が減っているのは事実。でも、私立希望者は逆に増えている。つまり、少子化だけでは説明しきれない変化があるようです。
でも、「公立離れ」とひとくくりにしていいの?
次に学校別の数字を見てみました。ここでは比較のため、宇都宮・宇都宮女子・石橋・宇都宮中央(普通科)・真岡の5校と、宇都宮北・宇都宮南・宇都宮清陵・鹿沼・鹿沼東の5校を取り上げています。
これは県が定めた学力帯の区分ではありません。県立高校を無作為に抽出したわけでもありません。身近な普通科10校を並べると、どんな違いが見えるかという試みです。
2023年の希望者数を100とすると、前者の5校合計は2025年に98.4、後者の5校合計は89.4。同じ時期の県内卒業予定者数は96.5でした。
今回選んだ学校では、前者の5校はほぼ横ばい。一方、後者の5校はそれより大きく減少しています。「公立離れは、どの高校でも同じように起きているわけではなさそう」と感じました。
石橋は増加。宇都宮中央は減っても2倍超
さらに面白いのは、学校を1校ずつ見ると、増減がまちまちなことです。
たとえば石橋高校は390人→442人(52人増)。真岡高校も162人→206人(44人増)です。その一方、宇都宮中央高校の普通科は643人→534人と109人減りました。
でも、宇都宮中央は2025年10月時点でも希望倍率2.23倍。希望者が減ったからといって、すぐに「人気がなくなった」とは言えません。さらに栃木翔南高校は175人→262人と、87人も増えています。
数字は正直ですが、その読み方は案外難しいですね。
「減った=人気が落ちた」とも限らない
ここで、見落としたくないことがひとつ。募集定員の変更です。たとえば宇都宮南高校と鹿沼高校は、今回比べた期間にそれぞれ40人定員が減っています。学校ごとの希望者数は、地域の中学生の数や定員の変化と合わせて読む必要があります。
それから、このグラフが示すのはあくまで10月時点の「希望先」。実際に受験した学校や進学した学校とは異なります。ある公立高校の希望者が減ったからといって、その子たちが私立高校へ移ったとまでは、この資料だけでは分かりません。
それでも、なぜ私立を選ぶ家庭が増えるのだろう
学費の負担、通いやすさ、コースの特色、部活動、学習サポート、大学進学への考え方。高校を選ぶ理由は家庭によって違うはずです。私立の授業料支援も気になりますが、今回の数字だけで「支援制度が原因」とは断定できません。
大学進学だけを考えるなら、地元の上位公立高校には十分な魅力があります。だからこそ、県全体の「私立志向」という言葉と、各校の希望者数の動きに差があるのが興味深いのです。
もしかすると今、変わっているのは「公立か私立か」という単純な二択ではなく、「わが子に合う高校を、費用も含めてどう選ぶか」という考え方そのものなのかもしれません。これはあくまで私の仮説です。
2026年の最新調査で、もう一度確かめたい
2026年10月1日時点の第1回調査は、2026年11月9日に公表予定。最新データが出たら、同じ学校・同じ時期で比較し、この変化が続いているのか見てみたいと思います。
みなさんは高校選びで、何をいちばん重視しますか。進学実績、学費、通学、学校の雰囲気、それとも子ども本人の希望でしょうか。数字を眺めていると、実際の保護者の声も聞いてみたくなりました。
調査の出典・読み方
- 栃木県総合教育センター:2025年度 第1回進路希望調査報告書(表3・表6)
- 同:2024年度 第1回進路希望調査報告書(表6)
- 同:2023年度 第1回進路希望調査報告書(表6)
- 調査結果一覧・2026年度公表予定
※県全体の数値は過年度卒業者を除く集計。学校別は過年度卒業者を含むため集計条件が一部異なります。グループ分けは筆者による例示で、学力の公式区分や因果関係の推定ではありません。2026年10月22日時点の情報です。